「忘れ村のイェンと深海の犬」の感想!これはもうジブリで映画化するしかない

忘れ村のイェンと深海の犬

大切な故郷を守りたい。少女の冒険と成長を描く、壮大な異世界ファンタジー。貧しいホロー村の少女・イェンが拾った、深海の犬。可愛さと凶暴さを併せもつ一匹の不思議な生物により、村は多大な苦難に襲われてしまう。故郷を救うべく、シェールと一緒に目指した都で偶然、国の王子と知り合いになったイェンたち。援軍とともに村に戻った彼女らを待ち受けていたのは、命を懸けた怪物との壮絶な戦いだった。少女の冒険と成長を描く、壮大な異世界物語。第25回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

 


村一番のおてんば娘が散歩中に変な生き物を拾った結果


新潮社のファンタジー大賞を受賞した作品ということもあって、がっつりファンタジーな作品でした。ちなみに25年間続いたこのファンタジー大賞は2013年のこの回で終了みたいです。残念ですね。運営者いわく「25年続けて役割を終えた」とのことですが、要するに本が売れないからなのかなと思います。

読書というもの自体が今はごく一部の人たちの嗜好みたいになっていて、それこそ昔は本を読むのなんて当たり前だった(他の娯楽が無かった)のに、最近の調査だと大学生の4割はまったく読書しないっぽい。最近はみんなスマホに夢中だからね。他の娯楽が溢れ過ぎて本を読もうなんて思わないんですね。

詳しい数字とかは知らないけど、たぶん子供の読書率もかなり低下してると思います。知り合いの保育士さんの話だと、幼稚園児が「タブレット」とか言っちゃってる時代ですからね。小学生や中学生が普通にiPhone持ってネットサーフィンしてるし世も末です。そりゃ犯罪も増えますよ。僕が中学生の時なんて携帯電話がやっと一般に普及し始めたころなので、持ってる人の方が少なかった。好きな女の子に電話したい時は携帯ではなく家電にかけた時代です。お母さんが出た時はマジでテンパったなぁ。

 

話が反れた。元に戻そう。

 

この作品は児童文学というジャンルに含まれるのかな?と読んでて思ったけど、大人が読んでも理解できない単語とか難しい漢字がけっこう使われてるので小学生とかにはちょっと読み辛いのかもしれない。内容自体はとてもシンプルなので映像化したらむしろ子供向けのストーリーだとは思うのだけど。

物語の冒頭では「世界中に名が知れ渡った女の子のお話があるよ」みたいな語り口調で始まり、その女の子の物語が色んな本になって出版されてるという切り出しから始まる。要するに、実在した女の子の伝記が後世にたくさん残っていて、多くの著者が書き記すほどに有名な少女だったということ。その子が主人公のイェンです。後に英雄と語り継がれるほどの壮大なエピソードがあるってわけですね。

舞台は超大きな王国の外れにあるホロー村という小さな田舎。中央都市の華やかさや賑やかさに反して、人も少なく錆びれた陰気な村という設定です。夕方前に太陽が沈んでしまうような地域らしく、日当りが悪いから野菜を育てることもできないし常に湿気の高いジメジメした風土。その結果、気持ち悪い虫が大量に発生したり菌類にとって良い繁殖環境なので茸の栽培が村の主な収入源。

村全体としてかなり貧乏なので食事は質素だし、男は中央都市に行商として出稼ぎに行き、女は茸の栽培をひたすら繰り返すみたいな毎日。今でこそ交通が発達してどこでも行けるような時代に僕らは生きてるけど、昔は1週間とかかけて街まで行くのが当たり前だったんだなぁと改めて実感。道中で事故にあったり追い剥ぎに襲われたりするのが当たり前の時代。物騒な世の中とかそんな甘い話じゃないね。

まぁこの辺の設定はファンタジーではお決まりと言うか、分かりやすく言えば中世ヨーロッパとかを意識した雰囲気なのかなと。ガロキンというのが主人公イェンの村が属する国の名前で、対立関係にある他の国の名前とかもちらほら出てはくるけど基本的にお話はガロキンの中だけで進んでいきます。

この国には超大昔から建設され続けている「ガロキンの檻」という巨大な壁があって、これは隣接する「墓森」という怪物の住処から人間を守るためにあります。進撃の巨人みたいな感じですかね。一歩踏み込めば命はないレベルの化け物がたくさん潜んでいる森がイェンが住むホロー村の近くにもあると。

イェンは女の子だけど超おてんば娘なので、両親の言いつけも聞かずにガロキンの檻に登ってはその壁の先にある世界を眺めたりしているわけです。ちなみにこの壁に登るだけでも相当危険らしい。一歩先は化け物の巣窟だからね。そんな生と死が表裏一体にある環境で育った少女の成長物語なのですよ。

 


最後まで明かされない「深海の犬」の秘密→続編あり?


おてんば娘のイェンが散歩中に偶然見つけてしまう犬っぽい変な生き物「シェール」がこの物語のタイトルにもある「深海の犬」なわけですが、最後の最後まで「どの辺が深海の犬なんすか?」という感じで秘密が一切明かされないまま物語が進んでいきます。これは上手いな〜と思いました。というかむしろ読んでる時は終わりが近付いてくるに連れて「いったいこのお話はどう終わらせるつもりなのだ?」と不安になったわけですが、その不安が逆に読者を引き込んで話さない力だったのかなぁと。

結論から言うなら、この作品にはたぶん続編があります。そういう感じで終わっているので、まだまだイェンの物語が続くと思うと楽しみで仕方ない。続編がありそうな終わり方とは言え、ちゃんと一つの物語として完結してるし、むしろ世界観とか設定がかなり凝っているのでそれを連想させるには丸々一冊使うしかなかったのかなぁと思った。少なくとも本筋の作り込みは相当細かいので独自性がある。

ライトノベルによくある「キャラ紹介で終わる1巻」という感じでもなく、でもまだまだ物語は序盤だなと思わせる部分もあって、この一冊を通して「なぜイェンという少女が英雄と呼ばれるようになったのか?」その最初のきっかけをお話しよう。という感じ。つまりこの物語にはまだまだ続きがあるはず!

 

思い出のマーニーもいいけど、これもジブリで映像化して欲しい

 

ジブリの最新作と言えば「思い出のマーニー」が現在公開中ですが、この作品の方がジブリっぽいなと個人的に思いました。ファンタジーでありながら決して明るいお話ではなく、生と死が強く描かれている点とか少女が困難に立ち向かっていく点とか物語にちゃんとテーマがあって、実にジブリっぽい!

 

 

たぶん作者は「もののけ姫」とか「風の谷のナウシカ」とかから影響受けてる気がします。イェンが育った村のダークな感じに対して中盤で登場する「ウンディス」というガロキン王国の中央都市の壮麗さがまた対照的で想像力をそそります。色んな種族がいる設定で細かい描写もあったけど、登場するのは少しだけでした。たぶん続編からわんさか出てくるんじゃないかなと思います。とにかく設定が細かく散りばめられているだけに続きが読みたい。最後まで読むと絶対に続きが気になる終わり方をしてた。

巨大な風呂敷が目の前で広げられて、そこに並ぶ商品の全体図を眺めている気分。一冊ではとても収まらないほど世界観がすごく広いので、それに比例して設定も細かく、3部作とかにしてようやく完結しそうな感じ。序盤としての掴みは素晴らしかったので、作者さん是非とも続編を早急にお願いします。

 

 


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