「とある飛空士への追憶」の感想!読者を引き込む5つの恋愛パターンに泣いた

とある飛空士への追憶

とある飛空士への追憶

「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!?────圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャルルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。

 


とりあえずめっちゃ感動するお話だった


これはもう何でもっと早く読まなかったんだろってくらいライトノベルという枠に収まらない不朽の名作でした。文量もけっこう多いので会話文主体の小説ではないですね。難しい言葉も色々と出てきますが、ストーリーはいたってシンプルな王道一直線です。主人公が美少女と出会って美少女を守り抜くというボーイミーツガール。やっぱり美少女ってのがポイント。守ってもらえるのはいつの時代も美少女だけですね。パズーもシータが可愛くなかったら落としてただろうし。

 

このシーン!!

ラピュタ

 

作風は天空の城ラピュタをイメージさせる設定や世界観で、実際に作者もラピュタをイメージして書いたみたいです。ラピュタのような爽やかさと一生懸命さを表現したかったとのこと。最後まで諦めない、それが冒険。これは公開当時のラピュタのキャッチコピーでもありますが、それが見事に再現されていて、とっても素敵な作品だったと思います。そりゃあ美少女と出会ってしまったら命賭けますって、人間だもの。美少女を前にすると男子は単細胞生物になるのです。

ストーリーは一本道だけどライトノベルと呼ぶには勿体ほど万人受けしそうな作品で、実際に映画化されるタイミングで一般小説としても新装版が発売されています。ガガガ文庫から発売された当初はクチコミでかなり人気が出て「これは泣ける!感動した!」みたいな感想が多かったみたい。ジブリの作品を小説で読んでいるようなイメージだったのでラピュタが好きな人は絶対に楽しめる作品です。ちなみに僕の初恋の女性はシータでした。当時はよく空を見上げてたなぁ。

 


あらすじを簡単に解説


世界観としてはまず二つの国があって、これらが戦争状態という設定。争い合っているので、もちろん相手の国の人間とは仲が良くありません。そして主人公のシャルルという青年はこの「レヴァーム皇国」と「天ツ上」という二つの国家の混血児なんですね。要するに両親がそれぞれ別の国家の出身で、言ってしまえばハーフってことです。戦争状態の世界では敵国の血が混ざった人間は差別され迫害されます。人間に階級がある世界で主人公は底辺に属しているわけですね。

そんなシャルルは幼少期に路上で生活しているところを一人の神父さまに拾われて強くたくましく成長します。そこから時は流れて傭兵飛空士としてレヴァーム皇国に仕えていたところ、ありえない任務を依頼されることに。正式な空軍正規兵ではなく使い捨ての傭兵でありながらも確かな腕を持つシャルルだけにしか務まらない命よりも大切な最重要任務。それは敵国である天ツ上の標的となっている次期皇妃ファナを遠く離れた皇都エスメラルダまで無事に送り届けること。

 

劇場アニメ版のイラストがこちら。キャラデザずいぶん違うなぁ

とある飛空士への追憶

 

お姫さまであるファナは男女問わず誰もがひれ伏すほどの圧倒的な美(無条件に人を隷属させるレベル)を持っていて、それに惚れ込み速攻で婚約を申し込んだアホ皇子のもとまで戦争真っただ中なのに敵の領土を飛び越えて送り届けろという無茶ぶり任務。階級で言えば頂点に君臨する一国のお姫さまとの空の旅というわけですね。狭い機内の中に二人っきり、そして途中休憩する無人島でも二人っきり。果たしてシャルルは無事にファナ皇妃を送り届けることができるのか?

という感じのお話でございます。色んな意味で「無事でいられるか」が心配になる任務ですね。次期皇妃であるファナは幼い頃からそうなるものとして育てられてきたので自分の殻の中に閉じこもっています。まぁ四六時中誰かの監視があったり何から何まで管理される人生を18年もやってたらそうなりますわな。出発当初はシャルルに対する受け答えも「はい」「いいえ」だけの淡々としたものだったファナだけど、命がけの旅の中で二人の距離は少しずつ近づいていき…?

 


イチャイチャ×2しやがってこんのリア充どもめがぁあ!


いくら男女が何日も二人きりとは言え、相手はお姫さまなわけですよ。もしも手なんか出したら首チョンパ。でもファナ嬢は誰もがひれ伏すほどの殺人的な美貌を兼ね備えていて、これは健全な男子としては何ともしんどいおあずけである。理性と本能が24時間ずっと本気で殴り合ってるみたいな、きっとシャルルの心の中はそんな感じだったのでしょう。心中穏やかでないとはまさにこのことだ。いっそのことファナに強盗マスクでも被せといた方が任務に集中できたはず。

でもまぁそんな誠実青年シャルルだったからこそファナも心引かれたわけで。一国のお姫さまの心を奪うとは何とも罪な男です。とりあえず頭のネジゆるゆるなどっかの皇子に送り届けるのやめちゃえよって何度も思うことでしょう。そのまま二人で遠くへ逃げちゃえって。でもシャルルは最後まで任務を全うしようとします。お互い立場上そんなことは死んでもできない、という暗黙の了解というか心の束縛みたいなものがあったんですね。身分を超えた決して結ばれない恋。

あぁ何だこの気持ちは。この気持ちは何だろう〜♪って歌が聞こえてきそうです。あの合唱祭とかで歌うやつ。切ない響きですなぁ。タイタニック思い出して泣きそうになりました。今でこそ恋愛にルールもなければ生き方も自由に選択できる世界ですが、昔は絶対に逆らえない理不尽なルールとか許せない仕打ちとか沢山あったんだなぁと思うと今この時代に生きていることを幸せに思います。身分がどうとか他人に自分の人生を指図される世界なんて辛いですね。胸が痛い。

 


読者を引き込む恋愛を描くために重要な5つのポイント


僕は別に恋愛を研究している学者ではないので専門的なことはよう分かりませんが、小説にしても映画にしても何かしらの作品を鑑賞する時にはいち読者として「どういう恋愛に胸が熱くなるか」を常に考えています。恋愛は作品を彩る上で重要なエッセンスですが、使い方を間違えると何も伝わってこないチープな作品になってしまうと思うんです。特に登場人物たちの心情にまったく共感できない展開とか、心理描写が雑すぎる場合とか、見てるのが苦痛になりますよね。

キャラクターの心理描写は作者によって十人十色な描き方があると思うので、どれが一番いいとか何が正解とかそういうのはないと思います。感性が抜群に優れている作者さんは「そうきたかっ!」みたいな表現が巧みだし、何も考えなくても才能だけで感動する恋愛が描けたらそれに越したことはないです。でも大半の人は才能ではなくある程度計算で書かなきゃいけないと思うので、せめて恋愛を盛り上げる基本的なポイントぐらいは押さえといてもいいんじゃないかなと。

そういう意味でこの作品は「恋愛の王道パターン」に徹底してるのです。基本に忠実というか。逆に言うと特別目新しいものは無いとも言えます。それを味気ないとか面白みがないと評価する人もいるでしょうが、僕は既存の王道設定をつまらないとは思わないので感動できました。王道ってありきたりなのかもしれないけど、裏を返せばそれだけ「万人受けする面白いテンプレ」ってことでもある。ということでドキドキする恋愛を描くための基本(王道)ポイントをご紹介!

 

その1:お互いの人生が決して交わるはずの無かった相手である


これは無意識でも使ってる人が多いと思いますが、そもそも物語に求められるのは「現実でありそうなこと」よりも「運命的な出会い」ですよね。今まで通り普通に生きていたら絶対に出会わなかっただろう相手であることは必須条件。その理由はそれぞれ世界観や設定によって異なりますが、この作品だと「身分」の違いが大きなポイントです。底辺の階級に属する主人公に対し、相手は頂点に君臨するお姫様。どう考えても絶対に関わることの無かった相手というわけです。

 

その2:自分と正反対の境遇にいて自分に無いものを持っている


それぞれ対極にいる主人公とヒロインなので、相手の生きている環境も持っているものも何もかもが対極にあります。この場合、気持ちが爆発するのは「自分の境遇に不満を感じている方」であって、この作品だとそれがヒロインであるファナでした。主人公のシャルルは底辺階級ながらも自分の人生に愚痴や文句を言うことなく胸を張って生きています。皇族として育ったファナはそんなシャルルに自分に無いものを感じてどんどん好きになる。無いものねだりってやつです。

 

その3:相手が自分に全てを話してくれなかったり隠し事がある


仮に相手のことを何から何まで知り尽くしていたら、その人のことをこれ以上知る必要が無くなっちゃいますよね。それってつまり興味が薄れるってことです。興味が薄れるということは、相手のことを無意識に考えてしまう時間が減るということ。それはそのまま好きという感情の減少につながります。だから一歩踏み込めないもどかしさだったり自分には見せてくれない表情があったりすると、何とかして相手に今より近付こうと必死になる。この距離感に燃えるんですね。

 

その4:限られた時間の中でしか一緒にいられない状況で恋する


今はすぐ真横にいるけど、もう少ししたら居なくなってしまう。その時が来ることを知っていながら相手と関わるのはとても切ない気持ちになりますよね。時間が止まって欲しいという感情は、まさにこういう場面で生まれるんだと思います。確実に近付いてくる別れの時、それが頭にあると「まだ気がついていない本当の気持ち」と向き合う機会が増えます。今まで当たり前にあった存在が急に居なくなる。そこで人は自分の本当の気持ちと向き合うわけですね。お決まり!

 

その5:愛すれば愛するほど二人の間に大きな障害が立ち塞がる


これは「ロミオとジュリエット効果」とか呼ばれてもいるみたいですが、二人の恋の邪魔をするものが多ければ多いほど恋は燃え上がるというものです。絶対に離れたくないのに二人を引き離そうとする障害が次から次へと出てきて、でもだからこそ、より一層相手を強く求めてしまう。磁石みたいな感じなのかな?この作品ではそれが「身分」と「任務」と「責任」など、色々な要素が重なって主人公とヒロインは結ばれたくても結ばれない結末へと向かってしまうのです。

 

というわけで最後の方ちょっとネタバレしちゃった感じですが、以上いかがでしたでしょうか?あくまで基本(王道)的な恋愛描写のポイント5つでしたが、何事も基本に忠実が大切というように、これらをベースに自分なりのアレンジとか応用で制作していくのが良いんじゃないかなーと思って書いてみました。物語を書く場合に限らず、これはそのまんま現実にも当てはめられるんじゃないかなー?と。

僕が大好きな映画トップ3に「タイタニック」が入るんですが、これもやっぱり上の5つのポイントをしっかり押さえた上で燃え上がるような恋愛が描かれています。世界中が恋に落ちたあのレオ様の物語、有名すぎて知らない人の方が少ないでしょうが見てない人がいたらぜひ一度ご鑑賞を。見たことがある人も、また改めて制作側の視点で見ると感じるものが色々とあると思います。恋愛もので僕がオススメする唯一の映画かもしれません。もっと開拓しないとですね〜。

 

タイタニック

ダバダ〜☆

 

ガガガ文庫から出版されたイラスト付きのラノベ版が最初に発売されたものですが、それに大幅な加筆や修正を加えて一般書籍として発売された新装版もあります。こっちはイラストはついていないですがラノベ版で描かれなかったエンディングのその先があったりするので二冊買いもありなのかなと。ちなみに僕はその類いですはい。だって本当に素敵なお話でしたからね〜。切ない系に弱いなぁ。

 


 


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